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宮本和英ロング・インタビュー!(後編) 『nicola』『月刊シリーズ』の仕掛人が初めて語る編集人生秘話

2011/11/11
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前編から続く)

■「月刊シリーズ」前史

 

──月刊シリーズは1998年10月に最初の『月刊永作博美』が出ています。“イワタ”の名前で知られるプロデューサーの岩田照雄さん、アートディレクターの清水正巳さん、デザイナーの瀬崎幹太さんをはじめ、関わった制作スタッフの方々が素晴らしい仕事をなさってますね。この名シリーズはどう生まれたんでしょうか?

 

それには前段階があってね。フォト・ミュゼは最初は名作写真集の復刻で、次第に一人の写真家の集大成的なものを作るようになっていくんだけど、それとは別にタレントを使ったエンターテインメント系の写真集をやりたくなってくるんですよ。とはいっても、新潮社は芸能界とは縁のない出版社だったから、どうしようかなあと思ってて。それがある時、羽賀研二と梅宮アンナ、彼らのペアヌード写真集をひょんなことからやることになってね。

 

──え、『アンナ 愛の日記』(1995年3月)って宮本さん編集だったんですか。あれも当時話題になりましたよね。

 

『フォーカス』から持ち込まれた企画で、芸能担当の人から話があって、篠山紀信さんにあの二人の写真を撮ってもらいたい、本人たちが篠山さんに撮ってもらいたいと言っているから篠山さんに打診してくれないかと。『フォーカス』としては、自分たちが最初に掲載する権利をもらえればいいから、写真集はどこが出しても構わない、ってことで。それで僕が篠山さんに話を持っていくわけだけど、最初はきっと断られると思ったんだ、当時の二人は一般的にけっしていいイメージではなかったから。そしたら篠山さんが「これは実は面白い」、「だってあの二人はものすごく綺麗じゃないか」と。世間の悪評だらけの中、二人だけの世界はこんなに綺麗だという、それは絶対面白いからやりたいと言うわけ。でも条件がある、新潮社から写真集を出せって言うの。

 

──その頃の新潮社は今よりももっとおカタい出版社のイメージですよね。

 

こんな企画通せないよ、と思って。でもなんとか、顰蹙を買いながらも企画を通したわけです。作家の先生たちにどう説明するんだって批判をされながらね。そんなことを言う嫌な奴がいるんだよ(笑)。だからタレント写真集はそれが最初。そこからタレントを使った写真集っていうラインができて、それが月刊シリーズにつながっていくんです。だから僕はタレント写真集を始めたのはすごくあとなんだ。

 

■アンチテーゼとしての月刊シリーズ

 

──もともとフォト・ミュゼをやってる人間として、タレント写真集に対してどうアプローチしようと考えたんでしょうか。

 

よくあるベタなアイドル写真集をやりたいわけじゃない、写真家の表現力はもっと色々とあるんだと思ってた。そういう写真家の個性とタレントの個性が組合わされたエンターテインメントの写真集っていうのは、今までにない面白さがあるんじゃないかと。そういうのを何冊かやってみて、その過程でイワタさんと一緒にやるようになるんだ。伴田良輔さん撮影の濱田のり子『エロティッシモ』(1997年12月)はその頃の一冊。濱田とはこのあとも金子国義さん撮影で『みだらな扉』(1999年5月)をやったね。よく見るといろいろな仕掛けがあって面白い写真集になってるんだけど。こういう風に、タレントを使って何か新しいことができないかと考えて、それが月刊シリーズになる。

 

──グラビアアイドル写真というと、渡辺達生さんや野村誠一さんなどが作ってきた、一種の王道とも呼べる流れがありますが、それは意識しましたか。

 

お二人ともすごく上手い写真家ですよね。だけど、僕はグラビアを撮ってない写真家にタレントを撮らせようと思ったんだ。月刊シリーズを始めた頃はヘアヌード写真集の流行の流れで、グラビアアイドルの写真集が一杯出てた。そういう王道に対するアンチテーゼ、そうじゃないものをってことだよね。もちろん王道は王道でマニエリスムの良さっていうのがあってさ、読者が望むポーズみたいなものをきっちりおさえてる。あれはやっぱり70年代くらいから始まって長い時間をかけて出来上がった様式美ですよ。その面白さっていうのはある。

 

──ただそこで宮本さんはそうした様式美へのカウンターとして月刊シリーズを始めたわけですよね。

 

美術史の流れと一緒だよね、歴史はこうやって色んなところでくり返してるんじゃないかな。マニエリスムに対するルネッサンスとして月刊シリーズが人気が出るようになって、グラビアの王道とか言われるんだけど、王道じゃないんだ。

 

■月刊シリーズはどう作られたか

 

──“王道じゃない”月刊シリーズをコンビニで見た時は、たしかに今までにない佇まいが新鮮でした。井川遥さんは月刊シリーズで注目を集めましたし、ほしのあきさんや真木よう子さんも月刊シリーズを通して評価が高まったと思います。

 

月刊シリーズは初版10万部、定価600円。コンビニ中心に配本して始めたんだけど、最初は500円にしたかったんだよね、他の商品と並んだ時に600円だと高いかなと思って。でも流石にコストダウンに限度があってできなかった。それでも写真集としてはある種の価格破壊。

 

──途中、2005年の69号『月刊山崎真実』からページ数も増えて値段もあがりましたが、これは?

 

携帯電話で月額300円でダウンロード見放題っていうのが出てきたから、600円の意味が薄まっちゃったわけです。じゃあ逆にボリュームアップして、ページを増やして、定価も高くして、関係者のギャラも高くしてね(笑)。よりゴージャスに方向転換しましょうと。それをしてなかったらもっと早く終ってたかもね。

 

──月刊シリーズのスタッフ間では制作にあたってどのようなやりとりが行われているんでしょうか。たとえば表紙一つとっても他の雑誌や写真集とは漂うムードが違います。

 

普通の写真集だったら絶対表紙にしない写真を選ぶとか、月刊風だよねとよく言われたけど、でもそれはあくまで写真の良さっていうので選んでるので、特別なことをわざとやってる気はないんです。フォト・ミュゼをやってた時と同じ視点です。

 

──デザインはデザイナーに一任してますか?

 

最初はけっこう口を出してましたね。僕も一応芸大出ですから(笑)。アーティスティックな雰囲気にしたいけど、しすぎるとダメだから。アートっていうのは独りよがりでいいんです。これがアートだって言えばいい、理解者がいなくても自分がいいと思えばそれでいい。それが成立する世界なんです。それは見方を変えれば独りよがりと言えるわけでしょう。だけどエンターテインメントはたくさんの人に受け入れられなきゃいけない。だからエンターテインメントの中にクリエイティブな雰囲気を漂わせたいなと。イワタさんはエンターテインメント育ち、僕はアート育ちだったから、そのバランスが良かった。

 

──お互いの領域がぶつかりあう感じですか。

 

いや、僕らのコンビの面白いのは、イワタさんの方がアート志向で、僕がエンターテインメント志向なんだよ。どちらかというと、僕は「やりすぎだ、アートを減らせ」と言う側なんですよ。やるのはいいけど量が多すぎると。でもイワタさんは「でもカッコいいじゃん!」ってね。それがなんとなくいい化学反応を起こして、デザイナーのところで形になってるのかな。今はもう長年付き合ってるからチーム全体のバランスも取れてる。マンネリになりがちな部分もあるんだけど、新しい表現があればバサッと変えられるぞって気持ちはあるから。チームでやってる良さっていうのはありますよ。

 

■月刊NEOと月刊MEN

 

──月刊シリーズは137号の『月刊神楽坂恵』(2010年10月)で一旦終了しましたが、長く出し続ける秘訣は?

 

いやあ、月刊シリーズもここまで続くとは思わなかったんだ。最初にたまたま売れてくれたからだよね。新しい形ではあったと思うんだけど、世の中に受け入れられるかは別だから。あれが受け入れられたのは幸い。モデルさんがそこから話題になってタレントとしての知名度も上がったり、表現力だけじゃない、色んな要素が入りやすいグラウンドを作ったというかな。自分の意志100%で作ってますってことじゃない。タレント、写真家、スタイリスト、制作に関わったそれぞれの気持ちの要素がいい形で働くような場。それが大事なんだね。

 

──そういういいグラウンドを作るにはどうすればいいんでしょう。

 

一つ言うと、僕はギャラを良くしたの、当時としては。そうしたらいい効果が生まれるんだよ。スタイリストもとっておきのを出してきてくれるとか、目に見えない相乗効果があった。まわりが良くしてくれる。月刊に出たかったんです、って言ってくれる人もいたし、そういう人が頑張ってくれたらいい方向にいくよね、そりゃ。続いたことには偶然もあっただろうけども、それを維持していくっていう努力はある。例えばキャスティング一つとっても、同じタイプのタレントばかりやっていたらつまらなくなるもの

 

──宮本さんは2010年末に新潮社を退社して、2011年からはクリエイティブ・スタッフはそのままに、新会社NEOを作って『月刊NEO』と『月刊MEN』の二つのシリーズを出しています。従来の人気女優路線は『月刊NEO』が引き継いでますが、新たに男性シリーズも『月刊MEN 向井 理』から始まりました。

 

向井くんはこれ以上ないくらい旬なキャスティングだったと思う。でも、それを続けていくっていうのはとっても難しいの。彼は人気沸騰中でアイドル的人気の渦中にあるから、そういうつもりはないのに、月刊MENは若手男性アイドルのシリーズだ、というイメージになっちゃうんだよね。それで2号目のAAAの與真司郞くんのあと、3号目に窪塚洋介が出てくれたことで、幅の広いキャスティングのシリーズになる可能性が出てくるわけです。彼はかつてはアイドル、今は表現者でありミュージシャンでもある、そういう評価がすごくあるでしょう、ああいう人が出てくれることで、全体が変わってくる。

 

──窪塚さんは以前、『月刊 渡辺奈緒子』(2009年9月)でカメラマンとしても登場してましたね。そこで信頼関係ができていたということでしょうか。

 

うん、その時にこちらの考え方を分かってくれた部分があったからできたのかもしれない。彼が出てくれたことで、窪塚が出るなら俺も出たいって言ってくれた人もいるんだよね。そういう効果がある。だから窪塚洋介には足を向けて寝れないですよ。

 

■シリーズの中に登場する意味

 

──月刊シリーズという通称の通り、被写体になる方はあくまでシリーズの一人として登場するわけですが、それをあまり好まない人もいるのではないかと思います。

 

もちろん、単発の写真集にしてほしい、シリーズはちょっとな、という意見もあるわけです。個人で活動してるわけだからね。そこを、自分の面白い表現を見せられる場だ、ってプラスに思ってもらえる場所にできたらいいよね。そうしたらどんどん面白くなるし、お互いに価値を高めあえる。それが月刊シリーズで一番感じてきたことです。タレントさんはやっぱり自分が一番だから、比較して見られたくない。だったら僕らも比較はしません、ただこのシリーズで出るといい効果が出ます、このグラウンドで走るといいタイムが出やすいんですよ、っていうことを説明する。だからシリーズでやることはすごく大事だね。

 

──グラウンドの整備をしっかりすることで、お互いにいい成績を出そうと。

 

やっぱり編集者やプロデューサーの仕事はそういうことだと思うんですよ。いいグラウンドを作る。そこでいい仕事をしてくれるのが一番いい。売れてくれればもっといい(笑)。うちはこういうグラウンドだって特徴を考えてね。長距離向き、短距離向き、色んなグラウンドがあっていい。

 

──ちなみに色んなグラウンド、の一つである『IQUEEN』創刊号はご覧になっていかがでしたか?

 

ビジュアルを全面に出した電子書籍っていうのはまだ誰もイメージできてない、作る側も暗中模索のこれからの世界だよね。そこで人気タレントに出てもらうにはある保証が必要じゃないですか。そこでどういう世界観を作っていくか。『IQUEEN』の本質はあくまで電子書籍だから、それを徐々に知ってもらうために、印刷物の写真誌と両方やっていくわけだからその大変さがあるでしょうね。でも最終的な目的は、ビジュアル系電子書籍の新しいグラウンドを創っていくことでしょう、これにはものすごく興味があります。僕も積極的に関わっていきたい。

 

──宮本さんはPLUPシリーズの第三弾の企画に関わっているそうですが、電子書籍に対してはどうお考えですか?

 

興味はあったし、お話をいただいたことはすごく嬉しかったし。でも時間がかかるんだよね、そこでどういうことが出来るのかっていうのを考えるのに。PlayStation 3のプラットフォームでどう売られるのか、電子書籍のどういうシリーズになるのか、言葉にならない部分がだんだん判ってきて、それでどう作って見せればいいのか具体的なところがようやく見えてきた。新しいジャンルが一旦見えてくれば、じゃあそこをはっきりさせていこうっていう。色んなことを考えててすごい楽しみです。いいグラウンドにしたいし。電子書籍のパターンは色々あるけど、その中の特徴あるものにしていきたいなと。やっと。

 

──新雑誌が楽しみです。失礼な言い方になるかもしれませんが、新潮社で定年まであと5年というところで、よく新しいことに挑戦できるなと思いました。

 

もっと若いときに独立したらね、会社をでかくしてやろうとか思っただろうけど、今は仕事を面白くすることが一番だから。それで面白さっていうのは個人と個人の出会いから生まれてくるんだよ。組織と個人ではなくてね。僕は組織から出て個人になったの。だから仲間もみんな個人として、個人が集まって一緒に仕事しましょうっていうスタンスなんです。

(文=ばるぼら)
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